山口のひとりごと。。

「ひとりごと」ですので、「そんな見方もあるんだな」くらいで流してもらえれば。

立川志らくがM-1に残したもの。

 

立川志らく師匠がM-1審査員を

勇退しました。

 

勇退」という言葉になっていますが、

志らく師匠の方から退いたのか、

M-1運営側からそういう打診があったのか

よくわかりませんね。

 

志らく師匠のYouTubeTwitterを見ても、

なぜ審査員を辞めるのかという説明が

ないので、志らく師匠の方から

「辞めます」ではないんじゃないかな、

という気もしているのですが…

 

まぁ、「勇退」ということなので、

志らく師匠、お疲れ様でした」

「今までありがとうございました」と

言うべきなのでしょうね。

 

 

志らく師匠は2018年から

5年間、審査員を務めていました。

 

特に初年度の審査は物議を醸しましたね。

 

ジャルジャルの国名分けのネタに

99点をつけて、

「1つも笑えなかったけどめちゃくちゃ

面白かった」という哲学的なコメントを

言ったことで「何言ってんだこいつ」と

いうようなことになってしまった。

 

ただ、これは笑いのプロとして、

ジャルジャルのネタを見て

「ほぉ…凄いなぁ…」と感心した、

という意味なんだろうと思います。

 

同年、かまいたち

審査員7人中5人が90点台という

高評価を得ましたが、

志らく師匠の得点は88点でした。

 

ナイツ塙さんや上沼恵美子さんが

ネタの構成やクオリティを褒める中、

志らく師匠は「上手さを感じすぎて

しまった。上手さの前に魅力が現れたらば

太刀打ちできない」というコメントを

しています。

 

志らく師匠の審査の大きな基準として、

「魅力」というのがあると思います。

 

漫才のプロが審査すると

ネタの構成やクオリティ、

技術を重視しがちなのに対し、

志らく師匠の視点というのは

とても斬新ですよね。

 

志らく師匠は、談志師匠に

最も「価値観」を認められていた

弟子と言えると思います。

 

談志イズムを最も理解している人で、

談志師匠の芸がまさに、

「魅力」のつまった芸なんだろう、と

思うのです。

 

最初は談志師匠は

上手い落語家だったのですが

そのうちに、独自の路線を

走るようになっていった。

 

その談志師匠の魅力を近くで見てきたのが

志らく師匠です。

 

志らく師匠はYouTubeで、

「落語は『よくわかんないけど面白い』

という種類の笑いがあるから

成立している」というような

話をしていました。

 

落語は、テクニックや技術で笑わせたり、

「あぁ、わかる!」という共感で

笑わせるというものでも

ないんだろうな、と思います。

 

落語は同じ噺でも演じる人によって

違う芸になる。

 

もちろん、まずは落語を演じる

技術というのは絶対に必要なんだけど、

そこに落語家さんそれぞれの個性だったり

お笑い哲学、魅力というものが

乗っかってこそ、お金をとれる芸に

なるんだろうな、というのは

すごく思います。

 

志らく師匠の落語は2回ほど

生で見させてもらいましたが、

やっぱり生で見ると凄いですからね。

 

 

そういう見方をする審査員が、

それまでのM-1にいたか?というと、

なかなか見当たらないですよね。

 

例えば、2015年に「馬鹿よ貴方は」という

コンビが出ていて、独特の世界観のネタを

披露しましたが、これがあまり

評価されず、その後テレビで

馬鹿よ貴方は を見ることも

そんなになかったですよね。

 

でも、2021年、ランジャタイという

コンビは志らく師匠にだけめちゃくちゃ

高評価を受けて、これがある意味

ネタになって、その後ランジャタイには

ある程度スポットライトが当たりました。

 

こういう、変わった芸風の芸人を、

ネタのクオリティどうこうというよりも

「スター」として認めていこう、という

風潮を、志らく師匠が作ってくれたのだと

思っています。

 

なんかネットではやたらと叩かれて

いましたが、漫才のプロにはできないような

独自の審査で、新しいM-1の見方を

志らく師匠が開発したんじゃないかな、と

いう気がします。

 

大変な仕事を5年も務め、

ちょっと大袈裟かも知れませんが、

「お笑いの発展に貢献してくださった」と

言って良いでしょう。

 

お疲れ様でした。