山口のひとりごと。。

「ひとりごと」ですので、「そんな見方もあるんだな」くらいで流してもらえれば。

【M-1】山田邦子先生の審査をデータで大解剖!

今回のM-1グランプリ

新審査員の山田邦子さんの審査が

1つ、注目ポイントでしたが、

すごく独自の目線で審査している感じが

しましたね。

 

今回の審査のデータをいろいろと

分析してみたのですが、

まず審査員別の平均点を見てみると、

邦子さんが唯一の80点台でした。

(邦子89.3、大吉92.2、塙92.0、富澤92.6、

志らく93.5、礼二93.1、松本91.2)

 

恐らく、邦子さんの中では

普通なら80点台、面白かったら90点台前半、

めちゃめちゃ面白かったら93点以上、

というような感じかなぁと思います。

(もちろん、あくまでM-1決勝進出者の

レベルの中で「普通」という意味ですよ。

決勝進出者は全員、面白いですからね)

 

 

また、審査員別で、全審査員の平均点との

点差を調べ、その絶対値の合計を

計算してみると、邦子さんが圧倒的に高い。

(邦子32.1、大吉16.3、塙9.9、富澤12.5、

志らく18.9、礼二15.9、松本15.5)

 

ちょっとわかりにくいと思いますが、

これが何を意味するかというと、

邦子さんがそれだけ、独自の目線で

審査しているということです。

 

逆に言うと、この数値が低い塙さんは

だいたい、平均点通りの点数を

出している、ということですね。

 

大吉先生が意外と高いのは、

審査が堅実で、あまり点差を

広げないからだと思います。

 

例えばダイヤモンドは審査員7名中6名が

80点台だったのですが、大吉先生は

唯一90点。

 

ロングコートダディは審査員7名中5名が

94点以上をつけたのですが、

大吉先生は92点。

 

このように、あまり点差をつけないので、

大吉先生の審査は平均点と少し離れてしまう

傾向があります。

 

 

 

で、この数値を見たときに、

「平均点と違う点数を出している審査員は

見る目がない」みたいに言う人も

いるんですけど、それは違いますよね。

 

以前の投稿でも書きましたが、

お笑いの審査には正解がないですから、

いろんな視点の人が必要です。

 

だから、塙さんみたいに平均点に近い

審査をする人もいれば、

大吉先生みたいに堅実な審査を

する人も必要。

 

大吉先生なんかは逆に、そんなに点差を

つけないからこそ、トップバッターの

カベポスターに94点という高得点を

つけることができるわけですよね。

 

これが点差をつける人だと、

トップバッターに高得点をつけると

点数のインフレが起きるので、

なかなか高得点をつけにくい。

 

そういう意味では、大吉先生の審査方法は

前半に出た出場者にとっては

有難い審査だと思います。

 

そして、邦子さんのように独自の目線で

審査するというのも貴重な視点です。

 

1つ面白いなぁと思ったのが、

カベポスターに対して7名中5名が

90点台をつけているのですが、

邦子さんと志らく師匠が80点台と

なっています。

 

邦子さんと志らく師匠以外は、

プロの漫才師ですよね。

 

カベポスターの場合、漫才としての

技術やネタの構成が良いので、

プロの漫才師が審査すれば高得点になる。

 

だけど、華やかさや爆発的なウケは

少し足りなかったので、

漫才師以外が見ると得点が伸びにくい。

 

そういう傾向が現れたのかなぁと思います。

 

 

また、さや香は審査員7名中6名が

95点以上をつけていますが、

邦子さんは92点と低め。

 

やはりこれも、漫才として相当

クオリティが高いと思うのですが、

邦子さんはそこを審査基準に

入れてないんですよね。

 

あくまで邦子さんは、

緻密に見てるというよりは

ニュアンスで見ている。

 

ある意味、プロ目線というより

ファン目線で見ている部分があって、

面白いですよね。

 

野球で例えると、

野球に詳しい人は「この選手のこの打ち方が

凄い」とか「この変化球が凄い」という

見方になるのに対し、

純粋に野球を応援してる人は

そんな細かいことよりも、

「この選手、なんか好き!」という

気持ちで応援しますよね。

 

例えばショートの選手で誰が好きか?と

聞いたとき、野球に詳しい人は

源田と答えて、単純に野球が好きな人は

坂本と答える。

 

そういう現象が起きますよね。

 

邦子さんは後者の見方なんだろうと

思います。

 

 

それこそ、ダイヤモンドというコンビに

対しての審査コメントを見ると、

大吉先生は「ネタは良いけど、

間とかトーンとかツッコミ方をもっと

計算した方が面白くなる」という言い方。

 

塙さんは「このネタならもうちょっと

テンション抑えた方が良かった」、

富澤さんは「発想は面白いけど掴みが

掴みきれなかった」というコメントで、

プロの漫才師は技術とか見せ方のところを

指摘しています。

 

これに対し、邦子さんは自身のYouTube

「ダイヤモンドはもっと突き抜けて

欲しかったね」という、

ニュアンス的なコメント。

 

緻密にというより、面白いか

それほどでもないか、というのを

漠然と捉えている感じがします。

 

この視点があることはすごく大切です。

 

もちろん、プロの評価も必要ですが、

漫才はプロが見るものではなくて

お客さんを笑わせるものなので、

「お客さんをどう楽しませるか」という

ことを意識すれば邦子さんの点数は

伸びるんじゃないかなぁ、と

個人的には思いました。

 

特に、カベポスターと男性ブランコなんかを

見ると、邦子さんの点数と邦子さん以外の

点数に大きく差があります。

(【カベポスター】邦子:84点、

邦子以外の平均:91.7点

男性ブランコ】邦子:86点、

邦子以外の平均:94.0点)

 

この2組の共通点は華やかさとか、

爆発的にウケた箇所がなかった、

というところ。

 

逆に言えば、そこが邦子さんから

点数をもらうコツなんだろうなぁと

思います。

 

 

 

もう1つ、面白いデータがあって、

審査員別で最高点と最低点の点差を

見てみると、邦子11点差、大吉6点差、

塙7点差、富澤9点差、志らく10点差、

礼二8点差、松本10点差、となっています。

 

邦子さんが1番振り幅が大きいですね。

 

そして、データのバラツキを示す

標準偏差」を計算してみると、

邦子3.58、大吉1.78、塙2.57、富澤2.76、

志らく3.38、礼二2.74、松本3.25と

なりました。

 

数字が大きければ大きいほど

バラツキがあるということですが、

邦子さん、志らく師匠、松本さんの3人が

特に大きい数字となっています。

 

つまり、この3人は面白い組とそうでない組を

ハッキリと点数に反映させていて、

点数の幅を大きくつけて審査をしている

ことがわかります。

 

この3人は大御所枠ですから、

点差の幅をつけるというのはやはり、

大御所の仕事なんだろうなぁと思いました。

 

逆に、大吉先生は点幅が6、標準偏差は1.78と

極端に少なく、すごく慎重に審査している

ことがわかります。

 

礼二さん、富澤さん、塙さんは

何回も審査を経験していて、

面白かったらそれなりに高い点数、

そうでなかったらそれなりに低い点数、

という審査をしているのかなぁ、と。

 

数字で見てみると、審査員7名の個性が

見えてきて面白いですね。