山口のひとりごと。。

「ひとりごと」ですので、「そんな見方もあるんだな」くらいで流してもらえれば。

弱さは人間らしさ

 

自分は、落語家の立川志らく師匠の

ファンなんですけど、

志らく師匠は落語について、

次のように語っています。

 

_落語は、人間は弱いもの、

間違える生き物だと教えてくれる。

間違えることを良いことだとは

言わないが、人間とはそんなもんだと

認めてあげる。それが落語_

 

 

 

古典落語の登場人物って、

本当にどうしようもない人が

多いんですよね。笑

 

例えば、自分が好きな

文七元結」という話は、

長兵衛という男がギャンブルに溺れて

大きな借金を抱えるという

ところから始まる。

 

それで、ギャンブルに負けた

腹いせに、妻や娘に暴力を

ふるうようになったので、娘のお久は

女郎屋(今で言う風俗的な店)に

助けを求めに行きます。

 

そこの女将は長兵衛に対して

十両(今の価値で約500万円)を渡し、

まずこのお金で借金を全部返しなさい、と。

 

そして、一生懸命働いて

500万円を稼いで、

1年後までに私に返済をしなさい、

もしそれができなかったら

お久をウチの風俗嬢として働かせる、と

言い渡します。

 

長兵衛は愛する娘・お久のためにも

ギャンブルを辞めてちゃんと

仕事をしようと決心するのですが、

その帰り道に、

川へ身投げをしようとしている

青年を目撃する。

 

話を聞くと、

その青年はべっ甲屋で働く青年で、

名前は文七と言う。

 

文七は、お客さんから集金した

500万円の代金を店に持って帰らないと

いけなかったのですが、

途中でそのお金をスられてしまい、

そんな大金をスられてしまった自分は

死んで詫びないといけない、と言って、

川に飛び込もうとしていたのです。

 

長兵衛は必死で止めるのですが

文七は「いや、死んで詫びないと

いけない」と言って聞かない。

 

そこで長兵衛は、

「金が無いとどうしても死ぬって

言うんだったら、これをくれてやる!」と、

大切な500万円を文七に

渡してしまうのです。

 

 

 

面白い話だなぁと思いませんか?笑

 

その後の展開を言うと、

実はスられたというのは

文七の勘違いだったことが発覚。

 

お店の主人とともに長兵衛のもとに

謝罪・返金に訪れ、

最終的にはそのご縁から

文七とお久が結婚をする、という

結末です。

 

 

ギャンブルに溺れ、

娘が身売りをしないといけなくなるまで

改心できないダメ男・長兵衛。

 

お金をスられたくらいで

死んで詫びようとまで考える、

責任感の強すぎる青年・文七。

 

そして、放っておけばいいのに、

そんな文七に対して

カッコつけて大切なお金を

渡してしまう長兵衛。

 

その全てが、

なんとも人間らしいんですよね。

 

正論を言ってしまえば、

「借金が膨らむ前にギャンブルをやめろよ」

「お金をスられたくらいで死ぬなよ」

「見ず知らずの青年に500万円も

あげるなよ」ってことなんですけど、

でも人間って、いつ何時も正論どおりに

動くってことはできない。

 

甘えたいとかカッコよく見られたいとか、

そういう弱さを持っているのが人間で、

落語はそういう弱い人たちを

怒ったりするのではなく、

それを受け入れて

笑いに昇華すれば良いじゃん、

という芸なのです。

 

志らくさんを通じて

落語と出会えたことによって、

自分は少し、

心が軽くなったような気がします。

 

人間って、所詮そんなものだよな、と

思うと、気持ちが楽ですね。