自民党総裁選で、
「解雇規制の緩和」を争点として
持ち出してきました。
それで今、解雇規制について
ネット上などでいろいろ議論されて
います。
すごく端折って言えば、
解雇規制の緩和とはつまり、
クビにしやすくするということ。
日本では、正社員として採用すると
簡単にクビを切ることは出来ないので、
そこを変えた方が良いんじゃないか?という
話ですよね。
「1つの会社で働き続ける」という
価値観よりも、
「流動的な雇用環境」を作った方が
活性化するのではないか?と。
2022年8月15日の「森永康平のビズアップ
チャンネル」というYouTubeチャンネルで、
森永康平氏(経済アナリスト)と
それに関連した話をしています。
森永氏は、日本国内の景気が悪く、
売上が思うように伸びない中で、
企業側は極力、
人件費を削って行きたいよね、と。
それで、正規で社員を採用すると
クビにできないので、どうしても
非正規の割合が増えていっているよね、
という分析をしています。
これを受けて竹中氏は、
次のように持論を展開します。
・経営側にとって、「支出面で固定費の
多い経営」は危なくて仕方ない
・人件費を固定費にしないために
非正規雇用を増やすのは仕方ないこと
・働く側にもいろいろな働き方をしたいという
思いがあるので「自由な働き方・自由な
雇い方」になる方が望ましい
・同一労働 同一賃金を達成し、
正規と非正規の差別を無くすことを
前提に、雇用の流動化を進めるべきだ
ここまで整理すると、
景気が悪い中で、企業は経営が
厳しくなっていくので、
正規で人を雇うことはリスクになるよね、
だからこそいろいろ調整の効く
非正規雇用を増やして、
雇用の流動性を高めた方が良いよね、と、
こういう話だと思います。
ここで、森永氏が
次のような問題提起をします。
・優秀な人はどんどん登っていけるが、
能力が低かったり、何かしらの障害の
ある人は、雇用の流動性が高まると
落ちこぼれてしまうのではないか?
ここは、自分も強く懸念するところです。
会社が社員をクビにしやすいような
社会を作っていきます!となってしまうと、
不安を覚える人はたくさんいますよね。
能力の高い人であれば、
主体性を持って「自己実現のために
違う環境に行って勝負するぞ!」という
発想ができるけれども、
自分の能力に自信の無い人は
「クビにされたら次どうすればいいの?」
ってなって、落ちこぼれていく危険性が
あります。
この点について竹中さんは
「ベーシック・インカムの導入」を
主張します。
ベーシック・インカムとは、
簡単に言うと、お金の面で月々の国民の
暮らしを政府が保障しますよ、という
制度だと理解しています。
竹中氏によると、
・「月100万円貰える」となると私も
働きたくないが、例えば月7万円の
支給にすれば、ある程度の生活は保障でき、
かつ「もっと稼ぎたい」と感じるだろう
・そのようなセーフティ・ネットを
用意することで、どうしても登っていけない
人たちのことはしっかり保護する
・その上で、クビにしやすくすることや、
学び直しなどの環境整備を推進して、
「セーフティ・ネット」と
「挑戦の機会」の両方が保障される
社会にしていくことが望ましい
つまり、ある程度の生活が
できるくらいのお金を国が保障することで、
落ちこぼれる不安感を除くとともに、
転職のための準備もしやすくする。
そういう環境を整えた上で、
経営側も「クビにできない」という
硬直的な雇用環境ではなくて、
非正規雇用などを柔軟に採用して、
切りたい従業員は切れるようにしていく。
そうすれば、「新しいことをしよう」という
国民の挑戦の機運が高まって
日本経済の成長が見込まれるほか、
企業としては会社に人が来てもらわないと
いけない、ということで、
賃上げにも寄与するだろう…と。
そういう論理だと理解しています。
ただ、個人的に思うのは、
やっぱりこれはあくまで
能力が高い人側の発想なんだろうと
思います。
実際、クビにしやすい社会にしていきます!と
なると、不安になる人の方が
多いような気がしますよね。
こういう「雇用の流動化」を
最も推進しようとしている政党は
維新だと思います。
要するに、生産性の高い人に
価値を見出していく。
それで日本の経済指標は
良くなっていくけど、
弱者はとことん落ちこぼれていって、
格差が広がっていく。
そういう社会を作ろうとしているのが
維新だと思うので、
自分は維新をなかなか好きになれないん
ですけど、今回、小泉進次郎さんと
河野太郎さんが雇用の流動化に
言及してきました。
特に竹中平蔵氏は
父・小泉純一郎元総理の右腕でも
あるので、進次郎さんは竹中さんと
近い考え持っていることも予想される。
進次郎さんが総理になれば、
クビにしやすい社会に傾いていくのでは
ないかな、という不安を個人的には
感じていて、進次郎総理になると
支持政党を自民党から変えざるを
えないかな、とも考えています。
自分は竹中さんのことを尊敬していますが、
雇用流動化についてはまだちょっと、
賛成しかねますね。
政治経済評論家の池戸万作氏は、
Twitterで次のように指摘します。
「雇用の流動化なんて、
好景気になれば自然と起こる現象であって、
政府が雇用の流動化を進めるのであれば
単に失業者が増えるだけで、
個人消費が減るだろう」
自分は、池戸氏の言う通りだと思います。
わざわざ政府が雇用の流動化を
推進しなくとも、
好景気になれば働き手が
いくらでも職を選べるようになり、
勝手に雇用の流動性は
高まっていくんですよね。
そういう形の方が、
「お前は使えないからクビ」ではなく、
「もっと良い会社に行きたい」
「違う環境で自己実現したい」という
意欲のある人が動いていく、という
「良い流動性」が実現していくので、
そっちの方が望ましいと思います。
つまり、政府がやるべきは
雇用の流動性を高めることではなく、
景気を良くしていくことですよ。
日曜報道THE PRIMEで、
「解雇規制をやって、安心して結婚や
子育てができるのか。決して国民のために
ならないだろう」と指摘しています。
これも、おっしゃる通りですよね。
泉氏の言う通り、クビにされる不安を
抱えなきゃならないような環境で、
どうやって結婚・出産をして行けと
言うのか?と思いますよ。
国民が求めているのは、
いかに将来を見通せる社会になって行くか、
という「安心感」だと思うので、
解雇規制の緩和や雇用の流動化というのは
ちょっと、ズレた政策じゃないかなと
思いますね。